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塚田鮮魚店(宮之浦)

塚田和人さん/塚田鮮魚(宮之浦)
 
 益救(やく)神社にほど近い塚田鮮魚。

 創業は、昭和45(1970)年。三代目に当たる塚田和人さんの祖母榮子さんが、この地で開業、50年以上の長きにわたって、島民に親しまれてきた。
 お刺身や鮮魚を扱う町の魚屋さんといった趣だが、屋久島北部のスーパーや商店に「すり身」や「トビウオの一夜干し」を卸している、北部では馴染み深い水産加工場でもある。

 屋久島の伝統食材である「すり身」は文字通り、魚肉をすり混ぜて作る。魚のミンチではなく、しっかりと粘り気が出るまで、丹念に混ぜるのが特徴で、店ごとに味付けも少しずつ異なる。
 機械化が進む前は、魚肉をすり鉢で搗(つ)いて、すり混ぜての重労働だった。このすり身を小判形にして油で揚げたものが「つきあげ」で、屋久島の代表的な郷土料理となる。
 島の居酒屋や民宿の定番料理だが、家庭では、そのまま食べるのはもちろん、そうめんやすまし汁の具にしたり、巻き寿司やちらし寿司、焼き飯の具になったり、さまざまに形を変えて食卓にのぼる。
 
 いわゆる「さつまあげ」との違いは、原料となる青魚。トビウオやムロアジなど、集落や店によって使う魚や配合は異なるが、青魚を使うという点は共通している。
 色味は愛媛の「じゃこ天」にも似ているが、肉厚に成形するところと、骨を混ぜ込まないところは、屋久島ならではだ。
 
 塚田鮮魚では、今は亡き祖母の味を家族で守る。屋久島で水揚げされたトビウオにムロアジをブレンド、砂糖、食塩、みりんのシンプルな味付けに、刻んだニラを混ぜ込む。ニラの緑が、グレーがかったベージュ色の生地に映える。

「祖母は種子島から嫁いできたので、種子島の味付けなのかもしれません」と和人さんは語る。
 祖母が亡くなったのをきっかけに島にUターンした和人さんは、両親や叔母と共に、家族で店を切り盛りしてきた。
 機械化が進み、祖母を見送った今も、その味は家族に受け継がれている。
 
 通販を始めたのは、つい最近。
 コロナ禍で、店頭はともかく、民宿や土産物店への卸売りが激減、それまで屋久島町のふるさと納税には登録していたが、少しでも販路を広げようと、チャレンジしてみた。
 
 オンラインで販売するのは、冷凍すり身とトビウオの一夜干し。一夜干しは、背開きのトビウオに塩だけのシンプルな味付け。水面を叩くように飛行するアクティブな魚だけあって、脂肪が少なく、弾力のある食感が特徴の高タンパク食材だ。ご飯のお供はもちろん、蒸かしたサツマイモと一緒に食べると甘さと塩気が口中で混ざり合うウェルバランスな1食となる。
 似ているようで違う、店ごとの味。島のふだんの食卓を支えてきたソウルフードがここにある。

屋久島町宮之浦248
TEL.0997-42-0609
営業時間:8〜18時
定休日:日曜日